ポルトガルワイナリー視察レポート
Quinta da AVELEDA - 2023/5/15 訪問 レポート:佐野 敏高
オポルトの街から車で移動して30分ほどで到着するPenafielに位置するキンタ・ダ・アヴェレーダ。
朝露に濡れた木々は美しく、手入れの行き届いた花々、ニュージーランドから植樹された壮大なユーカリの木、コルク樫の木が作る緑のアヴェニュー、アフォンソ1世が使っていた建造物を移築したオブジェや荘厳なアーチ、庭園内を闊歩する孔雀や雄鶏、そして山羊の飼育塔などもあります。夢のような自然美あふれる敷地内を歩きながら見学は始まりました。
1870年に創設されゲデス家(現オーナーの親族)によって運営されていましたが、1979年に現オーナーであるソグラペ社に経営権が渡りましたが、現在も5世代目のMartim Guedes, Antonio Guedesさんが運営しています。当日は会えませんでしたが、手洗い場に全スタッフとお二人の写真付きのポスターが貼ってあり大規模な生産者だと認識しました。
400haの葡萄畑を所有する最大手かつ、早い段階で機械化を進めた数少ないヴィーニョ・ヴェルデの生産者の一つとのことでした。最大樹齢45年ほどの葡萄畑が広がる美しい景色を眺めながらテースティングルームへと向かいました。
ポルトガルワインラヴァーなら知らない人のいない同地域のCasal GarciaやDouro地方のQuinta Vale D.Maria、Lisboa, Algarve地方の生産者も同社の傘下にあります。前者のワインは日本マーケットにとってヴィーニョ・ヴェルデが快活で気兼ねなく飲むことのできるワインと認識させ、日常に紐付けした大事な生産者です。そしてポルトガルの蒸留酒作りにおいてとても大事な歴史をもつ同社のセラーは蜘蛛の巣が張り、グレゴリオ聖歌の流れる荘厳な空間でした。
テースティングで面白かったのは、低価格帯ワインが同社における経営戦略上でとても大事なポートフォリオであることが理解できたこと。そしてスタンダードのAveleda Castas Sieriesは2019年まではミーニョ地方名のIGP認証で作られていましたが、テースティングした2022年産はDOP Vinho Verde名で作られていました。2020年以降のAlvarinho単一使用のルール改正に伴い表記が変わったものと見られます。保水性のある花崗岩土壌で作られる Alvarinho種の個性をしっかりと理解しながら、Loureiro種とのブレンドものを飲み比べることでブレンドにおけるLoureiro種のアロマと透明感のバランサーとしての役割が明確になりました。Parcela SeriesとしてParcela Roseiralなども作っています。これは母屋の目の前にある薔薇の植っているAlvarinhoの畑から採れた葡萄を使用し、樽を使用した醸造のワインを30%ブレンドしたハイブランドのものになります。薔薇を植えているのは畑内で発生する病害に一番敏感に反応するため、葡萄へ影響が出る前に対応ができるからですね。基本に忠実な環境作りをしてあげているのですね。
Douro地方Quinta Vale.D.Mariaのワインはスペリオールの2種をテースティングさせていただきました。低価格でいながらも奥行きがあり、納得させられるクオリティでした。葡萄ブレンドによる立体性や白ワインは固有品種Rabigato, Viosinhoの可能性を感じずにはいられない果実にあふれるも、透明な味わいの持続性に虜になりました。Douro地方への期待が高まるテースティングでした。
新しいロープライスの価格帯をポートフォリオに入れるためにLisboaのMandriolaも所有したようです。白はフレッシュで香りのいいFernao Pires, Moscatelのブレンドもの。Casal Garciaとは異なるピクニックワインですね。赤ワインはSyrah, Alicante Bouschet, Touriga Nacionalのブレンドもの、まるでリスボンを散歩しているかのような軽快なワインでした。
2nd flightはAnselmo Mendesさんのワインをテースティングしました。Vinho Verde地方で最も重要なサブリージョンの一つMoncao e Melgaco地区よりMr.Vinho Verdeと言われる同氏は、1998年に自身の名前で樽を使った新しいスタイルのVinho Verdeを作りさらに名が広まることとなります。
Loureiro 100%のワインのクオリティの高いこと、透明でアロマ豊か、苦味と線の細いドライな後味に2杯目が進むような美しいワイン。そして樽使いのないフレッシュなAlvarinhoの個性と比較する。Loureiroには青色りんごのフレッシュな味わいの核があり、Alvarinhoには黄色りんごの厚みのある果実が存在する。どんな醸造を行なっても共通する個性を理解できるのは勉強になりました。
Parcela Unica ,はかなり樽使いを際立たせた上級キュヴェの一つ、Alvarinhoの可能性を信じて作られた国際ステージで輝くようなスタイルなのでしょうね。Curtimentaは実に革新的な作りのようで9ヶ月の澱接触によりAlvarinhoに複雑味を与えながらも果実の特徴と品種個性を失わせることなくクリーミーな味わいに仕上がっていました。
赤ワインのPaddusco Privateは伝統黒葡萄品種の1つAlvarelhaoで造られます。実にエレガントで色調の淡さ、口内の質感の滑らかさはいつまでも飲み続けられるような透明さあふれるワインでした。固有葡萄の大切さがよく理解できます。
素晴らしいワインをテースティングした後は、美しい食事のおもてなしがありました。
Vinho Verdeは食事と会話があって一層輝く、そして食後にいただいたアグアルデンテ(蒸留酒)と甘いデザートとの取り合わせは日本ではなかなか理解されにくいですが、本当に夢見心地なマリアージュを体験しました。
大手の生産者さんですが、さまざまなワインブランドを傘下にもち、ポートフォリオを分けて発信、販売をしているのだなと現地でしか感じることのできないことを体験することができました。