ポルトガルワイナリー視察レポート
José Maria da Fonseca - 2023/5/17 訪問 レポート:勝川 雅人
ジョゼ・マリア・ダ・フォンセカ(JMF)はリスボンから橋を渡り車で1時間程度のセトゥーバル半島のアゼイタオンにあります。この付近は海の影響を受けた地中海性気候、石灰岩が風化した砂地、アラビダ山脈の斜面は標高が高くまた海が近いので冷涼となる要素があります。JMFは1834年創業の伝統ある家族経営のワイナリーです。19世紀の半ばにポルトガル三大酒精強化ワインであるモスカテル・デ・セトゥーバル、世界最古のブランド「ペリキータ」、ロゼワイン「ランサーズ」を生み出したワイナリーです。訪問した場所はツーリズム・ハウスで歴史的な建造物やセラーと美しい庭園がありました。
テイスティングでは、ポルトガル人で初めてカリフォルニア大学デイビス校を卒業し最新の醸造技術を取り入れ現在のJMFをリーディングする醸造家のドミンゴスさんが丁寧に1本1本のワインの説明としてくれました。ブドウ品種、土壌、気候、ヴィンテージ、ペリキータの歴史など多岐にわたる話しをしてくれました。ペリキータはブランド名ですが世界では最近まで品種名として認知(品種はカステラン)されてきました。今ではペリキータの白ワインやロゼワインもあります。またコンクリート・タンクで伝統的な製法の「ペリキータ・クラシコ」やアンフォラを使った「ジョセ・デ・ソウサ」、モスカテル・デ・セトゥーバル(マスカット・オブ・アレキサンドリア)で作った「アランブル」もテイスティングしました。伝統を守りつつも新たな領域へ挑戦している印象です。説明が終わると我々だけでなくJMFのスタッフやゲスト・ワイン・メーカーも自然と一斉に拍手が起きました。レジェンドの風格を感じます。
このツーリズム・ハウスではJMFの歴史だけなくポルトガルワインの歴史が学べます。またここには必見の2つの重要なセラーがあります。ペリキータのセラーとモスカテル・デ・セトゥーバルのセラーです。ペリキータのセラーにはマホガニーの大樽(最大で21,000L)と225Lの小樽がずらりと並んでいます。大樽のワインと小樽のワインをブレンドして瓶詰めするそうです。一方、モスカテル・デ・セトゥーバルのセラーは元々テキスタイル工場で1750年頃に建てられたようです。小さな樽から750Lの樽が並んでいます。このワインのラベル表記の年数は最も若いヴィンテージで決まるとのことでポートの年代表記とは違います。(ポートの年代物はスタイル)モスカテル・デ・セトゥーバルは96度のスピリッツを加えて発酵を止めて甘口にする酒精強化ワインですが、オレンジワインのようにスキンとのマセレーションが長いのが特徴です。JMFは伝統を守りつつ持続可能なワインづくりに向けて進化しているリーディング・カンパニーであることを実感しました。
この日のディナーはJMFが併設しているレストランで生産者の方々と楽しみました。地元のチーズ(ケイジョ・アゼイタオン)とJMFのワインとの相性はすごく良かったです。また地元のチョコレート・ムースの食べ方としてモスカテル、ピンクペッパー、塩、オリーブオイルを加えるそうで試してみると格別に滑らかな舌触りとなりとても美味しかったです。
- ツーリズム・ハウスの入り口
- レジェンドのドミンゴスさん
- 伝統的なボトリング機
- 広大な美しい庭園
- モスカテル・デ・セトゥーバルのセラー
- ペリキータのセラー
■ キンタ・ダ・ラゴアルバ・デ・シマ(Quinta da Lagoalva de Cima)
キンタ・ダ・ラゴアルバ・デ・シマはテージョ地域テージョ川の南岸にあります。
アントニオさんによると、夏は日中45度くらいの猛暑になることがありますが夜間は20度程度まで下がり日中の寒暖差が大きい気候となります。またワインだけではなくオリーブオイル、穀物、クルミ、家畜の混合農園のようです。ブドウ品種は伝統的な品種と地域のブドウ栽培の最近の品種を組み合わせています。 テイスティングでは、アリントとシャルドネ、トゥリガ・ナシオナルとシラー、トゥリガ・ナシオナルと、アルフロシェイロ、カステランのブレンドを試飲しました。ワインの価格に対して品質の高さを感じ、優れたコスパのワインであると感じました。
- テイスティグしたワイン
- アントニオさん