ポルトガルワイナリー視察レポート

Lavradores de Feitoria - 2023/5/16 訪問 レポート:勝川 雅人

ラブラドレス・デ・フェイトリア(LF)はドウロ川沿いの街ピニャオンから北に20km程度の小高い丘の上にあり、モダンなワイナリーの建物がひときわ存在感を醸し出しています。ワイナリーの名前はポンバル侯爵*1が選んだこの地域の最高のワインを当時「フェイトリア・ワイン」と呼んでいたため、Lavradores(農民)が協力してフェイトリア・ワインを造ることに由来しています。ここは2000年に18の農場所有者と 15 の生産者がリソースと専門知識及び伝統と革新を共有するために団結し、1つの会社、1つのワイナリー、1つのブドウ栽培とワイン製造チームの下でドウロで最高のワインを生産するために結成されたユニークなワイナリーです。
*1 1856年、ポルトガルのぶどう栽培者やワイン⽣産者を守るために世界最初の原産地呼称の新しい法律を導⼊した

マーケティング・マネジャーのマーリンが出迎えてくれて、いきなりワインとグラスを持ってヴィニヤードへ行って白ワインとロゼワインを飲みながら説明を聞くという最高のシチュエーションです。朝からテンションがあがります。ドウロ地域のブドウ栽培はドウロ川沿岸の下流である西からバイショ・コルゴ、シマ・コルゴ、ドウロ・スーペリオールのサブ地域に分けられますが、LFはその3つの地域に600haの畑を保有しているとのことです。ブドウ栽培地の標高は150m~900m、年間降水量はサブ地域の西から順に、約900mm、約650mm、約500mmとなり東(上流)へいくほど雨が少なくより大陸性気候の様相となります。品種は多様な土着品種、樹齢は80年を超えるものもあります。土壌はシストが多いですが一部に花崗岩の場所もあります。このように様々なテロワールのブドウがあるため多様なスタイルのワインがつくれるとのことです。また、マーリンさんが強調していたことで興味深かったことは、ここは協同組合ではなくLavradores(農民)を経済的に安定させることを目的にしているという説明でした。昨今、サステナビリティなワインづくりとして環境保護的な活動が取り上げられがちですが、ここは経済的な観点を掲げ革新的なビジネスモデルに基づいて誕生したワイナリーと言えます。

ワインメーカーのラウル・ペレイラさんが、選果から醸造、ボトリング・ラインまでの各プロセスを丁寧に説明してくれました。赤ワイン用の浅底のステンレスタンクのメカニカル・ラガールと制御ボックスがありました。その後、窓から畑が一望できる真新しいテイスティング・ルームでLFの5つのブランドのワインをテイスティングしました。白ワインはゴウベイオ、マルヴァジア・フィナ、ラビガド、ヴィオジーニョなどのブレンド、赤ワインは、トウリガ・フランカ、トウリガ・ナショナル、ティンタ・ロリス、ティンタ・バロッカなどのブレンドで、ドウロ・スタイルです。最近はソービニョン・ブランも手掛けているようです。

メーカーズ・ランチは樽の貯蔵庫の間のスペースにダイニングテーブルをセットし素晴らしい環境で美味しいワインと食事を楽しむことができました。メーカーの方々とは日本とポルトガルの共通点の話しで大いに盛り上がりました。

LFは今ではDOC ドウロで 7 番目に大きい輸出業者になっているとのことでした。多くの農場所有者と生産者がいて共有することができ、原料ブドウの種類が豊富であることはこのワイナリーの強みであり今後更に発展していくことが期待できます。

  • 小高い丘の上にある真新しいのワイナリー
  • 朝底ステンレスのロボット・ラガール
  • マーリンさん(左)とラウルさん(右)
  • 大きな窓から畑が見えるテイスティング・ルーム

■ ラモス・ピント(Ramos Pinto)

ここでのゲスト・ワインメーカーは1880年設立、ポートワインの礎を築いた名門、ラモス・ピントです。ポートに使われるブドウ品種として5つの優良品種を選び出したのはこの生産者だそうです。輸出担当のロドリゴさんによると、現在、ドウロ川沿いに 4 つのヴィニヤードを所有しているとのことです。ドウロ地域の中心部ピニャオン近郊にあるキンタ・ド・ボン・レティロとキンタ・ダ・ウルティガ、そしてドウロ・スペリオールにあるキンタ・ドス・ボンス・アレスとキンタ・デ・エルヴァモイラです。また1990年からスティル・ワインの生産も行っています。

試飲したスティルの白ワインはラビガド、ヴィオジーニョ、アリントのブレンドです。ラビガドやヴィオジーニョはドウロの土着品種であり皮が薄く実も小さい品種のようです。熟したストーン・フルーツのフレーバと適度な酸のバランスが良いです。赤ワインはトゥーリガ・ナシオナル、トゥーリガ・フランカ等のブレンドでポートワインと共通した品種です。ブドウの凝縮感がありながらもややスパイスのトーンがあります。RP10ポートはキンタ・デ・エルヴァモイラの畑のブドウで平均10年熟成のブレンドで、RP20はキンタ・ド・ボム・レティロの畑で作られたワインの熟成期間違いを複数ブレンドして造られる20年熟成のトゥニーです。シルキーなテクスチャーでアーモンドやキャラメルのようなフレーバーが加わり複雑な香りの秀逸なワインでした。

  • 輸出担当のロドリゴさん