ポルトガルワイナリー視察レポート
Niepoort- 2023/5/17 訪問 レポート:勝川 雅人
ニーポートのワイナリーはアルト・ドウロの観光の起点レグアとその上流のピニャオンのほぼ中間の位置にあり、ドウロ川の支流であるテド川付近の急峻なスロープを上っていったところにあります。ニーポートは 1842 年創業の伝統ある家族経営のワイナリーであり、現在は 5 代目のディルク・ニーポートさんが会社を率いています。ドウロ・ボーイズ*2のメンバーであり、世界のワイン産地で多くを学んだディルクさんがドウロ地方でシマ・コルゴ地区にヴィニヤードを取得し、「レドマ」、「バトゥータ」、「シャルム」、「ドリンクミー」など次々とユニークなワインを作り出しただけではなく、他の産地や国の生産者とプロジェクトを組み革新的なワインづくりをしています。
*2:1980年代後半にスティル・ワインにフォーカスした5つの生産者がプロモーションを目的に結成した。キンタ・ド・ヴァレ・ミアンゥ、キンタ・ヴァレ・ドナ・マリア、キンタ・ド・クラスト、ニーポート、キンタ・ド・ヴァリャード。
今回のアテンドは輸出担当のスザナさんとツーリズム担当兼ソムリエのペドロさんです。ショップ内にあるオブジェの自転車の前のフタがあいて地下のボトルワインセラーが見れる仕掛けとなっておりCoolさを感じます。ニーポートは創業時、ポートワイン専門会社でしたが家族経営でポートワインだけでは経営が厳しいためディルクさんが英断してスティル・ワインへ挑戦したとのことです。現在の生産量の割合はポートワイン25%、スティル・ワインが75%だそうです。設備はブドウの搬入から醸造・貯蔵までは3階建てのグラビティ・フローです。シンプルな構成でポンプが不要で省エネかつブドウやワインに対する負荷が少ない仕組みです。発酵と熟成はステンレス、樽、フードル、アンフォラなど目指すワインのスタイルに応じて使い分けています。また樽はその大きさや新樽/古樽だけでなく焼き加減や目の詰りの違いをワインの目指すスタイルによって使い分けています。樽の使い分けに強いこだわりを持っている印象を受けました。
テイスティング・ルームはテド川を見下ろす丘の上に位置し渓谷の素晴らしい景色を眺めることができる場所です。スティル・ワインはエレガントで低アルコールのものが多いのは、早めに収穫することで果実の酸味とミネラル感を保つことに重きをおいているからとのことです。またポートワインの質問をした際にマスター・ブレンダーの話がありました。マスター・ブレンダーも同じ家族が世代から世代へと受け継いでおり現在は 5 代目とのことです。ポルトガルのワインはブレンド文化であるためブレンダー技術の継承も持続可能性なワインづくりにとってキーファクターだと感じました。
ニーポートの使命は「ニッチプレイヤー」の地位を維持し何世紀にもわたる伝統と革新を組み合わせて、特徴的なワインを生産し続けています。現在は6代目ダニエルさん(現在31歳)がここのチーフワインメーカーとして従事しているとのことですので今後も更なる革新が期待できる大注目のワイナリーです。
- 造成中の段々畑、ブルトーザが落ちそうになっています
- ニーポートのテラスからテド川を一望できる
- 樽の焼き目と目の粗さを使い分けている
- ペドロさん(左)とスザナさん(右)
- グラビティ・フローを説明するペドロさん
- テイスティングしたワイン